5分で分かる、IT事情
携帯電話市場が成長期から成熟期に移行する中、さまざまな問題や課題が表面化した2008年。携帯キャリア各社の社長が、新たなフェーズにさしかかった2009年のビジョンを年頭所感で明らかにした。  NTTドコモは「サービスのパーソナル化」「融合サービスの提供」「動画サービスの推進」「ソーシャルサポートサービスの推進」を強化し、ケータイのさらなるパーソナル化を目指す考えだと同社社長の山田隆持氏。端末はプラットフォームのグローバル共通化を推進し、「AndroidやWindows Mobileなどのオープンプラットフォーム端末の導入や普及促進をすることで、多種多様なプレーヤーの参入を可能にする環境を整える」としている。同社が2010年度後半の導入を予定しているスーパー3G(LTE)については、2009年に開発が完了する見通し。端末とネットワークの高度な連携サービスが可能になり、トラフィック増に伴うネットワーク負荷も軽減すると、その利点をアピールしている。  MNP開始時の勢いが失われた感のあるKDDIは、「KDDIの顔が見えない」「KDDIらしさの喪失」といった評価を覆すために「もっと“尖った”、お客様をドキドキさせるような商品やサービスが必要になる」(KDDI 小野寺正社長)という見方を示している。また、「2009年はKDDIが前進するか、後進するか、分かれ目の年になる」と危機感をあらわにし、「先鋭かつ果敢な『攻め』で明るい2010年代の扉を開くためには、『チャレンジ&チェンジ』――既成概念にとらわれず、常に変化していく姿勢が求められる」(小野寺氏)と強調した。  ソフトバンクモバイルの孫正義社長は、「携帯電話が『インターネットマシン』としてさらに進化し、人々の生活により深く関わっていくことになるだろう」(孫正義社長)と予測。2008年11月に契約者が100万を突破したイー・モバイルの千本倖生会長は「2009年は事業拡大と初期投資の一巡により、単月黒字を達成する予定」とし、伝送速度の高速化やエリア拡大、次世代技術のLTEにも積極的に取り組むと話している。  2009年に次世代高速通信規格「WILLCOM CORE」の導入をひかえるウィルコムの喜久川政樹社長は、「WILLCOM COREの活用と現世代PHSサービスの創意工夫を行い、3度目の再成長を実現させる」(喜久川氏)と意気込んだ。 ●ドコモがMNP開始後初の転入超過に――12月の契約数  1月9日、電気通信事業者協会が2008年12月末の携帯・PHS契約数を発表した。累計契約数は11月末から約40万200件増の1億1039万5000件となった。  携帯電話の累計契約数は1億585万5200件となり、キャリア別では13万5200増のソフトバンクモバイルが、20カ月連続で純増トップとなった。12万400の純増を果たしたNTTドコモは番号ポータビリティ制度の開始以来、初めて転入超過に転じた。イー・モバイルは10万8600、KDDIは3万6000の純増。KDDIは3カ月連続でMNPの転出が超過するなど苦戦が続いている。  1300の純増となったウィルコムは、「ウィルコム定額プラン」込みで、最大24カ月間980円/月で利用できる「WX310Kスペシャルモデル」などの施策や、オフィスとPHS間の通話を定額にする法人向けサービス「W-VPN」が好調だったという。 ●ソフトバンクモバイル、1月29日に春モデル発表  1月29日、ソフトバンクモバイルが東京国際フォーラムで春モデルの発表会を開催する。  2008年冬モデルの発表会をニコニコ動画で生放送するなど、一般ユーザーに開かれた発表会を目指してきた同社は、春モデルの発表会に一般から3500人を招待すると発表。発表会にはエド・はるみ、キングコング、品川庄司、世界のナベアツ、フットボールアワー、ライセンス、ロバート、ロンドンブーツ1号2号ら吉本興業のお笑い芸人が登場し、お笑いライブを展開するなど、これまでとは趣向を変えて春モデルを披露する。 ●Macworld Expo開催――iTunes Store、全曲DRMフリーに  1月6日(現地時間)、Appleでワールドワイドマーケティング担当上級副社長を務めるフィル・シラー氏が、同社最後となるMacworld Expoで基調講演を行った。  同氏はiTunes Storeで販売する楽曲を、全曲DRMフリーにするとともに、iTunes Music Storeを「iPhone 3G」の3Gネットワーク経由でも利用可能にすると発表した。  3Gネットワーク経由の楽曲ダウンロードは、米国以外では地域によって状況が異なり、日本においても1月7日の未明以降可能だったダウンロードが、7日の14時前後にはできなくなった。アップルの広報は、「3Gネットワークを経由した音楽配信は、日本では行っていない」としている。 ●登録者と利用者が異なる場合も、年齢に応じたサービスを――auの「利用者登録制度」  KDDIは契約者の名義と実際の利用者が異なる場合の「利用者登録制度」を、2月9日から開始すると発表した。  契約者と利用者が異なる場合でも、利用者の年齢に応じたサービスを受けられるようにするためのサービスとして提供する制度。例えば未成年者向けのフィルタリングサービスは2月以降、親権者からの申し出がない場合には18歳未満の利用者に自動で適用されるが、現状、親の名義で登録した携帯電話には自動で適用されない。これが2月9日以降、利用者登録制度で子供の生年月日を登録すれば、親名義の携帯を子供が利用する場合でも、自動でフィルタが適用されるようになる。  KDDIではほかにも、(1)20歳以下のユーザーの「まとめてau支払い」の利用限度額を1万円/月に設定(2)年齢に応じたアクセスの可否、コンテンツ・商品の販売可否を判定するサイトにアクセスする際の年齢判定(3)CDMA 1X専用割引サービス「ワイドサポート」の適用可否を判定 などで登録情報を利用できるとしている。 ●ドコモ、ユビキタス特区で“プッシュ+リアル連携”の実証実験  NTTドコモと沖縄県名護市、名護総合学園名桜大学、NTT西日本沖縄支店が、ユビキタス特区事業の「携帯電話による観光動線誘導サービスの実証」を、沖縄県名護市で実施すると発表し、関係者向けの説明会を開催した。  ケータイ旅人サービスは、GPSとFeliCa、アクティブタグ(RFID)を連携させ、1つのアプリから、観光客がそれぞれのエリアに適した観光情報を得られる仕組み。、NTTドコモ 執行役員 法人事業部 第一法人事業部長の真藤務氏は、名護市の優れた観光資源をコンテンツとしてユーザーに提供するとともに、「エリア別にコンテンツをプッシュ配信する技術やサービスの基盤を確立し、他地域での応用も含めて(可能性を)検証していきたい」とした。  これまでもGPSやFeliCaを利用するアプリは存在したが、「これら複数の位置測位や近接通信技術を組み合わせて、シームレスなサービスとしたのは全国でも初めて」とNTTドコモ モバイルデザイン推進室 室長の加藤祐一氏。GPSやFeliCa、Bluetooth、アクティブタグなどは、ユーザーの行動履歴を収集し、より適切なタイミングで最適なコンテンツを提供するために利用され、旅人サービスのアプリは、待受iアプリとして常にシステムに常駐する。  GPSが「広域」の位置把握に用いられるのに対して、アクティブマーカーは「中域」の位置把握をカバー。最後の「狭域」での位置を把握するのが、モバイルFeliCaとなる。今回の実証実験ではモバイルFeliCaの通信機能のみを利用し、使用した電子クーポンの判別やスタンプラリーでの応用などが考えられている。「広域や中域のエリア情報に基づいて電子クーポンを配信し、それが実際に店舗で使用されたかを判別することで、送客・誘導効果を検証する」(佐藤氏) ●ドコモ、「BlackBerry」のサービス料金を値下げ  NTTドコモは1月8日、BlackBerry向けインターネット接続サービス「ブラックベリーインターネットサービス」「ブラックベリーエンタープライズサービス」「ブラックベリーデュアルサービス」の月額料金を2009年2月1日から1575円に値下げすると発表した。  1月31日までの月額料金は、ブラックベリーインターネットサービスが3045円、ブラックベリーエンタープライズサービスとブラックベリーデュアルサービスが3570円だが、2月1日から3サービスとも1575円となる。  2月20日からは、BlackBerryのパケット通信の上限額が「Biz・ホーダイ ダブル」の対象となる。これにより、「BlackBerry Bold」と「BlackBerry 8707h」の利用者が「Biz・ホーダイ ダブル」を契約すれば、月々1029〜5985円で国内のパケット通信が使い放題になる(※PCのデータ通信は対象外)。 毎回、ITを駆使し、業務効率や競争力強化を実現している中堅中小企業にスポットをあてるこの企画。今回は婦人服企画製造販売を行うセンソユニコに、店頭管理システムの活用についてうかがった。  アパレル業界においては、現在売れている商品が何かをきちんと把握することが何より重要だ。センソユニコは、PDAを使った店頭管理システムを導入することで、売上や売れ筋をさまざまな角度から分析している。また、システムが柔軟に進化していけるよう、ITベンダーとの契約も工夫しているという。 小売りに欠かせない情報をスピーディに取得するシステム  高級婦人服の企画から販売までを手がけるセンソユニコ。生地の製造・卸会社を起源とし、素材にこだわった商品作りを行っているのが特徴だ。同社は、現在全国の百貨店やショッピングセンターにおいて200以上の店舗を展開している。  しかし、製造・卸から小売りに転換したことで、1985年の創業からしばらくは手探りの状況が続いたのだという。製造・卸であれば、月単位でまとめて売上を処理していけばいい。ところが、自社の小売店を持つと、在庫はすべて自社のもの。店頭で何が売れているのかを可能な限りすばやくキャッチしていかなければならない。さらに、センソユニコの商品は、素材にこだわった高級品であるため、企画から店頭に並ぶまで約6ヶ月かかる。最初のうちは、各店舗の店長向け展示会で、各店が商品を選んでいたが、それだとロットとしてまとまらない。そこで、商品は本部で一括管理するようにしたが、今度は売れる店と売れない店、在庫の有無の差が出てくる。  こうした状況を改善するため、2001年には大手ベンダーに依頼して、オフコンを使った店頭管理システムを導入する。ただし、このシステムは動作速度も遅く、使い勝手として満足行くものではなかったという。当時は通信事情が現在ほどよくなかったということもある。  さまざまなシステムの候補を検討し、最終的に導入したのがオリンパスの「Liliput3」(リリパット3)だ。このシステムは、バーコードスキャナ付きのPDA(携帯情報端末)で商品のバーコードを読み取り、そのデータをデータセンターに送信、各種の分析を行うというもの。センソユニコが出店している百貨店もPOSを導入しているが、百貨店側のPOSでは大まかな商品種別(ズボン、シャツなど)のデータしかとれず、迅速な店頭管理を行うにはあまりにも不十分なのである。また、PHSによる通信機能を利用することで、店舗内に別途インターネット用回線を用意したり、パソコンを設置する必要がないというメリットもあった。 センソユニコ執行役員 総務部長 長光元久氏 データ分析機能を独自に作り込んだ  センソユニコは、Liliput3をただそのまま入れたわけではない。本来、Liliput3は、各種のデータ分析機能も備えた統合的なサービスだ。しかし、センソユニコ側としては、売れ筋商品のデータを独自の視点でよりきめ細かく分析したいと望んだ。そこで、店頭管理システムのソフトウェアについては別のベンダーに発注し、データだけをLiliput3から受け取るようにした。  このシステムには、同社ならではのさまざまな工夫が凝らされている。例えば、同社は年間で4、5000種類もの商品を取り扱うため、品番やブランドだけでは管理しきれない。そこで、個々の商品に素材名がわかる体系的なニックネームを付け、同じような素材を使っている商品の売れ行きも即座に把握できるようにした。また、ファッション業界では色のトレンドを把握することが非常に重要だが、色別のわかりやすいグラフ表示によってすばやく傾向をつかめる。さらに、店舗別、地区別の売上、商品の売上ランキングなど、さまざまな角度からデータを分析できる切り口を用意し、全社員がこのシステムへアクセスして自分なりのデータ活用を行えるようにした。各商品データには画像が添付されている。 センソユニコが導入したシステムの概略。PDAからのデータは、Liliput3のデータセンターで集められ、センソユニコの社内サーバーに送られる。社員は、社内サーバーにアクセスすることで、データをさまざまな角度から見ることができる  工夫はデータ入力の部分にも及ぶ。こうしたシステムで商品を管理する場合、大元となるマスター情報に間違いがあってはならない。そこで、不自然な原価率のマスター情報が入力されたらエラーを指摘するようになっている。ほかにも店頭在庫がマイナスになる、不自然な数の注文といった条件をいくつか設定しておき、こうしたエラーが起こると該当部署に確認をうながすメッセージが現れるようになっている。  PDA側には動画の再生・録画機能が装備されており、今後は動画データも積極的に活用していく予定だ。コーディネート例などを撮影して各店舗のPDAに配信、逆に店頭の様子をPDAで撮影して本部に送信するなど双方向のコミュニケーションを実現することで、より顧客満足度の高いサービスを提供するという。 システムは、2年間使えればいい  さまざまなITツールを導入して、業務改善に利用しているセンソユニコだが、ITに対する割り切りも見事だ。 「ITの世界は恐ろしく進歩が速いため、システムは2年で陳腐化するというのが実感です。4、5年契約のリースを結んだ場合、残りの2、3年は、機能していないシステムを社内にずっと抱えていることになってしまいます。PDAを利用したシステムにしても、2年間だけ使うという前提で選択しました。長期間に渡るITベンダーの縛りは避けるべきだと思います。ITベンダーが代わっても大丈夫な体制にしておくべきでしょう。」(執行役員総務部長 長光元久氏)  また、長光氏は、ITベンダーとの契約についても注意すべきだという。 「一般的に、ベンダーにしてみれば、システムはいったん完成して納品したらそれで終わり。以降の修正や改良はそのたびに費用がかかります。しかし、修正や改良を繰り返していかないと、システムは使いやすいものには進化しません。そこで、店頭管理システムについては、毎月定額のコンサルティング料金を払うことで、無制限にシステムを改良してもらえる契約を結びました(ただし、半期ごとにどのような改良をするか大まかな合意を結んでいる)。ベンダーには弊社専従のスタッフを置いてもらい、各部署からの修正や改良の要求にすぐ応えてもらえるようにしています。」